この職業をひと目で
出典・参考 (8)
- https://www.indeed.com/hire/job-description/data-scientist
- https://careers.societegenerale.com/en/tips-candidates/what-does-data-scientist-do
- https://www.datascience-pm.com/data-science-roles/
- https://www.coursera.org/articles/what-is-a-data-scientist
- https://graduate.northeastern.edu/knowledge-hub/what-does-a-data-scientist-do/
- https://www.odga.virginia.gov/media/governorvirginiagov/chief-data-officer/css/Job-Description---Data-Scientist-Sample-(1).pdf
- https://365datascience.com/career-advice/types-of-data-science-roles-explained/
- https://www.bls.gov/ooh/math/data-scientists.htm
理由の1位がAIになった年に、削減の総数は減った
チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスは、米国企業が発表する人員削減計画を毎月集計している再就職支援会社です。同社の2026年7月レポートには、並べて読むべき数字が二つ載っています。7月の削減発表は33,429人で、6月の45,849人から27%減りました。1月からの累計は477,033人で、前年同期の806,383人より41%少ない水準です。ところが同じレポートで、7月の削減理由の1位はAIでした。1か月で10,970人、その月の33%です。年初からの累計では、AIが理由として挙げられた削減が112,713人、全体のおよそ24%になります。
この二つを並べると話が単純でなくなります。AIが理由の1位に立った年に、発表された削減の総数はむしろ40%以上減っているからです。他の理由も小さくありません。同じ期間の累計で、市場・経済環境が90,075人、事業所閉鎖が84,630人、組織再編が57,476人、契約喪失が40,758人でした。
ここで集計の性格を押さえる必要があります。チャレンジャーが数えているのは、企業が発表文に自分で書き込んだ理由です。原因を特定した結果ではなく、企業が選んだ説明です。フィナンシャル・タイムズが最近の人員削減は本当にAIのせいなのかと問うたのも、まさにこの点でした。「AI導入に伴う組織再編」と書けば投資家には未来に備える会社として読まれ、「需要の鈍化」と書けば事業が悪化した会社として読まれます。同じ削減に付けられる二つの文の値段が違うのです。
そこで、その文を検証する人が社内に必要になりました。実際にどの業務がどれだけ減ったのか、その減少はツール導入の時期と重なっているのか、それとも以前から続いていた流れなのかをデータで切り分ける仕事です。人事部のレポート作成ではなく因果を扱う分析なので、募集はデータサイエンス側から出ます。
日本では、問いの形が少し変わります
日本の雇用慣行では、整理解雇に判例上の厳しい要件がかかります。だから同じ技術変化が、米国では削減として表に出て、日本では配置転換と新規採用の抑制として現れます。数字の出方が違うだけで、起きていることが軽いわけではありません。むしろ表に出にくいぶん、社内の誰かが数えないと誰も気づかないという意味で、この職務の必要性は日本のほうが高いとも言えます。
新卒一括採用が残っている構造も効いてきます。既存社員を動かしにくい会社が調整弁として使うのは採用計画で、それは何年か遅れて年齢構成の歪みとして戻ってきます。「今期の新卒を何人減らすか」という判断が、5年後にどの階層の人が足りなくなるかを決めるわけです。この因果を数字で示せる人が経営会議にいるかどうかで、その会社の人員計画の質はかなり変わります。
分析の単位は社員ではなく業務です。「エンジニアは100人必要か」という問いは分析できません。「このチームが1か月に処理する作業を種類別に分けると何が何件で、種類ごとに平均何時間かかるか」に置き換えて初めて計算が始まります。分解しておけば、ツールが入ったときに構成比の変化として見えます。レビュー待ち時間は縮んだのに要件定義の工数は変わっていないなら、人がボトルネックである地点は移動しただけで消えてはいません。
韓国開発研究院が2023年に出した報告書が、この区別を数字で示しています。同報告書の推計では、韓国の仕事の38.8%で技術的には業務の70%以上を自動化できます。一方、同じ報告書での実際の導入率は従業員10人以上の民間企業の2.7%、250人以上に絞ると約20%でした。技術的に可能な面積と、実際に導入された面積のあいだがそれだけ開いているということです。この職務の作業空間はその隙間にあります。付け加えると、この数字自体が2023年時点のもので、これほどの調査を毎年回す機関は多くありません。自社の最新の数字を作る必要があるのはそのためです。
道具立てはデータサイエンティストが使ってきたものと大きく変わりません。SQLで人事システムと業務システムのログをつなぎ、PythonやRで導入前後を比較し、ダッシュボードにして人事担当役員が毎月開くようにする。違うのはデータの性質です。一社の従業員数は統計的に小さな標本で有意差が出にくく、組織改編のたびに時系列が切れます。だからモデルの精度より研究デザインが効いてきます。導入した部署と導入していない部署をどう比較するか、自然実験として使える組織変更がいつあったか。そこを見つける感覚です。
隣接する職務との違いも押さえておくと役に立ちます。コンサルティング会社の人材トランジション支援が組織に何をすべきかを提言するのに対し、こちらは実際に何が起きたかを測ります。法務が決定を防御するのに対し、こちらはその決定の根拠になる材料を作ります。三者が同じ会議室に座ることも珍しくありません。
データは最後に開き、結論は人の職を左右する
不利な話から先にします。人事データは社内で最後に開くデータです。個人情報の制約がかかり、労使関係に直接触れるため、入社したての人にすぐ照会権限は下りません。自分が回した分析が、誰かの職務をなくす根拠として使われうることも織り込む必要があります。数字が意に沿わないという理由でもう一度回してほしいと言われる頻度も、他の分析業務より高めです。
入口は二つあり、育つアナリストの性質が違います。一つはデータサイエンティストやアナリストとして入社し、組織にまつわる課題を担当するうちに移っていく道です。統計と実験計画はすでにあるので、覚えるのは等級制度や人事関連法規のほうになります。もう一つは人事企画や採用から始めて分析力を足す道です。この場合、どの数値がなぜそう記録されたのかを知っているぶん、データの読み違いが少なくて済みます。どちらが有利かは、会社がこのチームを人事側に置いたのか、全社のデータ部門に置いたのかで変わります。
正直に書くと、この役割を専任で置いている会社はまだ多くありません。多くは人事企画の担当者が表計算ソフトで兼務していて、求人票に独立した職種名としてはあまり出てきません。裏を返せば、人事データを扱った経験のあるデータサイエンティストが応募者の中にほとんどいないということです。3年から6年目にこの領域を一度でも担当した人は、組織改編の多い会社で繰り返し呼ばれます。
学生のうちに準備するなら、会社のデータがなくてもできる練習があります。厚生労働省の一般職業紹介状況など公開されている統計から、自分の専攻に近い職業の求人数を月次で取り出して線を引いてみることです。次に、その線が折れた月に何があったかを調べます。そして、その出来事が原因だと言うためにはどんなデータがあと何が必要かを書き出します。最後の一行がこの職務のすべてです。そして今のところ、公開資料だけで人員削減の発表に書かれた理由を外から検証する手立てはありません。その検証が社内でしかできないという事情が、この席が社内に置かれる理由です。