キャリアシグナル
この職業に入るとき、何が先に見られるか
- 学位
- 高い
- ポートフォリオ
- 低い
- 資格
- とても高い
- インターン
- 高い
- 参入障壁
- ふつう
- 採用の勢い
- 急増
- AIの影響
- 低い
最初の一歩はこう
病院のリハビリセンターやフィットネス施設の実習生から始めます。
退院とジムのあいだに残る人たち
心臓の手術を受けた人が退院する。医師は運動をするように言う。ところがその言葉には、どれくらいの強さで、何分ずつ、週に何回やるのかが入っていない。近所のジムに行くとトレーナーが困った顔をする。この人の心拍数をどこまで上げてよいのかを判断する根拠が、その人の手元にはない。
運動処方の専門家が受け持つのはこの場所だ。体の状態と体力を測り、その人に合う運動の種類、強度、頻度、時間を組み立てて指導する。日本では公益財団法人 健康・体力づくり事業財団が認定する健康運動指導士がこの役割の中心にいる。相手は健康な成人よりも、高血圧や糖尿病などの慢性疾患のある人、高齢者、手術や怪我のあとで回復途中の人が多い。
この仕事がやらないことも同じくらいはっきりしている。診断も治療もしない。疾患のある人については医師が医学的に判断したうえで依頼があり、その範囲の中で運動を設計し管理する。同じ財団の健康運動実践指導者とは役割の広さが違い、心臓リハビリテーションの領域では日本心臓リハビリテーション学会の心臓リハビリテーション指導士が別に置かれている。
病院の外で体を扱う場所が増えている
医療費のかかり方が変わってきた。治療そのものより、治療のあとの管理と、病気になる前の予防に重心が移っている。高齢化がそこに重なる。病院と日常のあいだをつなぐ役割が生まれるのは、この二つが同時に起きているからだ。
実際に人を探しているのは、リハビリテーション科、心臓リハビリテーションのプログラム、自治体の健康増進事業、高齢者施設の運動プログラム、企業の健康管理だ。スポーツチームのコンディショニングとは方向が違う。記録を伸ばす仕事ではなく、落ちた機能を戻して保つ仕事である。
どんな人に向くか
- 解剖学や生理学のように、体の構造と仕組みを掘り下げる勉強が退屈にならない人
- 病気のある人や高齢者に、ゆっくり何度でも説明し直せる忍耐のある人
- 医師、理学療法士、看護師と役割を分けて働く構造を窮屈に感じない人
- 目に見える変化より、数か月かけた小さな改善を記録することにやりがいを見いだせる人
どうやって入るか
- 体育、健康科学系の学位を修める。養成校の課程を経る道と、財団の養成講習会を受ける道があり、どちらも学歴と実務経験の要件に結びついている。
- 健康・体力づくり事業財団の認定試験に合格し、登録する。財団は健康運動指導士と健康運動実践指導者の二つを認定しており、対象と役割の広さが異なる。
- 登録は更新制で、維持には財団が定める講習の受講が必要になる。取ってしまえば終わりという資格ではない。
- 在学中から病院のリハビリテーション部門や自治体の健康増進事業で実習の機会を作っておく。採用で実際に数えられるのはこの経験だ。
- 臨床の方向に進むなら運動生理学やスポーツ医学の大学院に続く。病院の職には修士以上を求める場所がある。
現実として知っておくこと
- 資格を取ればすぐ臨床の職が開くわけではない。病院の採用は枠が少なく、待遇は施設によって差が大きい。
- 医師の依頼の範囲で働く構造だ。自分の判断で進めたい人には窮屈で、医療行為との境を越えれば法的な問題になる。
- 現場によっては一般のトレーナーと似た仕事になることもある。資格がそのまま職務を決めてくれるわけではない。
- 記録がそのまま根拠になる。測定値と反応を残さなければ、次回の強度を決める手がかりがない。
詳細キャリアレポート
この職業、本気で目指すなら
こんな人に向いてる
- ✓体がどう働くかを数字で確かめるのが面白い
- ✓病気のある人や高齢者に同じ説明を何度でもし直す忍耐がある
- ✓医師や理学療法士と役割を分けて働く構造を窮屈に感じない
- ✓数か月かけた小さな変化を記録で追うほうが性に合っている
覚悟しておくこと
- !臨床の職そのものが少なく、資格を取れば病院の職が開くわけではない
- !医師の依頼の範囲で動く。自分の判断で進めたい人には窮屈になる
- !現場によっては一般のトレーナーと似た仕事になることもある
- !体を直接扱うので、事故の risk とそれに伴う緊張が常にある
段階別 準備ロードマップ
中高生のうちに
- 生物と体育を両方つかんでおく。この職業はその二つが重なる場所にある
- 慢性疾患のある家族の一日を観察してみる。運動できない理由が意志ではないことを先に知ることになる
- 自分の体で指標をひとつ三か月測ってみる。安静時心拍数でも何でもいい。変化がどれだけ遅いかが体でわかる
大学・初期
- 運動生理学と機能解剖学を試験科目ではなく道具としてつかむ。現場で毎日使うのはこの二つだ
- 病院のリハビリテーション部門や自治体の健康増進事業で実習時間を積む。採用で実際に数えられるのはこの時間だ
- 運動負荷試験を自分で回す機会を作る。測定値を強度に変える訓練は本ではできない
- 心肺蘇生の資格を先に取っておく。臨床の現場ではあって当然のものとして扱われる
就職準備
- 最初の職は臨床でない可能性が高い。自治体の事業や施設の運動プログラムから始めて事例を積む
- 対象をひとつ決めて深く掘る。心臓リハビリでも高齢者でもいい。対象が狭いほど呼ぶ側がはっきりする
- 測定と再測定の記録を自分の資産として残す。次の職で見せられるものはそれだけだ
おすすめの専攻・分野
資格・試験・ポートフォリオ
伸ばすべき素養
資格の外で結果を分ける力、今から積めるもの
測定値を強度に変える力
運動負荷試験の結果や安静時心拍数といった数字は、それだけでは何も指示しない。この人に今週どの強度で何分やらせるかに移してはじめて処方になる。今から鍛えるなら、自分の体で指標をひとつ決めて四週間測り、値が動くたびに翌週の計画を自分で書き直してみる。
境界で止まる判断
この仕事は、できることより、してはいけないことを知るほうが先だ。診断せず、薬の話をせず、医師の依頼の範囲を越えない。その代わり異常の兆候に気づいて止め、引き渡す判断はこちらの仕事だ。今から鍛えるなら、運動中止基準を項目として覚え、実際の事例をその項目に当ててみる。
続けさせる説明
どんなに良い計画も守られなければゼロだ。この仕事の成否は対象者が来週も来るかにかかっていて、それを決めるのは計画の精緻さではなく説明の仕方だ。今から鍛えるなら、運動が嫌いな人にひとり、目標をわざと低くして提案し、何週目でやめるかを見てみる。
次回を決める記録
測定値とその日の反応を残さなければ、次回の強度を決める根拠がない。記録は事務ではなくこの仕事の材料だ。しかも事故が起きたとき判断の正当性を示せるのも記録だけだ。今から鍛えるなら、一人分の四週間を表ひとつにまとめ、その表だけを見て五週目の計画を立ててみる。
現実のアドバイス
この仕事の難しさは体力ではなく職の数にある。臨床の採用規模が小さく、待遇は施設の種類や地域で差が大きい。資格を取ったのに仕事の中身が一般のトレーナーと似てしまうことも実際にある。もうひとつは境界だ。目の前で状態が悪くなるのが見えても診断はできず薬の話もできない。その線を越えれば法的な問題になる。長く続く人はこの二つを承知で入ってきた人だ。対象を絞って事例を積み、記録を自分のものとして残す人が次の職をつくる。