キャリアシグナル
この職業に入るとき、何が先に見られるか
- 学位
- 高い
- ポートフォリオ
- とても高い
- 資格
- 低い
- インターン
- 高い
- 参入障壁
- ふつう
- 採用の勢い
- 横ばい
- AIの影響
- ふつう
最初の一歩はこう
デザインスタジオやメーカーのデザインチームのインターンから始めます。
手に取るものすべてに、先に描いた人がいる
朝に握った電動歯ブラシのグリップ、電車のつり革の太さ、冷蔵庫の扉が閉まる音。インダストリアルデザイナーは、量産される製品の形と使い方を設計する仕事である。スケッチと3Dモデリングで案を起こし、モックアップを手にして直し、設計や生産技術の担当者と金型、素材、コストをめぐって詰める。きれいに描くことより、「この肉厚で成形できるか」「使う人がボタンを見失わないか」を最後まで問い続ける時間が一日の大半を占める。国内では自動車、家電、精密機器、住宅設備、家具が主な職場で、メーカー内のデザイン部門に所属する人が多い。
製品が画面とサービスに結びつき、設計の範囲が広がった
いまの製品は単体では売られない。アプリと接続し、ファームウェアで更新され、サービスとして維持される。そのためインダストリアルデザイナーが、物理的な形と画面上の体験を一緒に考える場面が増えた。制度面では、この職種に免許や登録はなく、法律で定められた業務独占もない。職能団体は公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)で、プロダクトデザイン検定を運営しているが、これは民間の検定であり就業要件ではない。振興の枠組みとしては、公益財団法人日本デザイン振興会(JDP)が主催するグッドデザイン賞があり、受賞は企業の製品訴求に使われる。形の権利は意匠法に基づき特許庁へ意匠登録することで守られ、その出願図面を用意するのもデザイナーの仕事に含まれる。
どんな人に向いているか
- 製品を分解して「なぜこの作りなのか」を考える癖がある人
- 手描きスケッチ、3Dツール、モックアップ製作を行き来することが苦にならない人
- 設計、営業、購買の担当者と根拠を持って交渉できる人
- 自分の案がコストや工程の都合で変わっても、最終製品の完成度を優先できる人
どうやって入るか
- 美術大学のプロダクトデザイン系学科、または工学部のデザイン系コース(千葉大学など)が主な進路である。
- 自動車や電機メーカーのデザイン職は新卒採用が中心で、エントリー時にポートフォリオの提出が標準になっている。
- 採用を決めるのは学歴よりポートフォリオで、課題設定から量産を見据えた検討までの過程を示すプロジェクトが評価される。
- デザイン事務所やインハウスの契約職から経験を積み、メーカーへ移る経路もある。
- 実務ではRhino、SolidWorks、Fusion 360、KeyShotなどのモデリングとレンダリングのソフトが広く使われている。
現実として知っておくこと
- 免許職ではない。誰でもインダストリアルデザイナーを名乗れるため、実力の証明はすべてポートフォリオに委ねられる。
- デザインの最終決定権がデザイナーにある会社は多くない。企画、原価、日程の都合で案が削られることを繰り返し経験する。
- 量産品が一つ世に出るまで1年以上かかることが珍しくなく、その多くは発売に至らない。自分の名前が残る成果物は少ない。
- フリーランスや事務所勤務はプロジェクト単位の収入になるため、仕事量の波が大きい。
詳細キャリアレポート
この職業、本気で目指すなら
こんな人に向いてる
- ✓新しい製品を買ったらまず裏返して、ネジの位置やパーティングラインを確かめる人
- ✓紙のスケッチ、CAD、スタイロフォームのモックを一日に何度も行き来しても飽きない人
- ✓設計者から「この肉厚では成形できない」と言われたら、感情ではなく代案の図面を持って座り直す人
- ✓コストや工程で自分の案が変わっても、最終製品が手に馴染むかを先に確かめる人
覚悟しておくこと
- !免許職ではないため法律で守られた業務範囲がなく、実力の証明はすべてポートフォリオにかかる
- !デザイナーに最終決定権がある会社は少なく、営業、原価、日程で案が削られる経験を繰り返す
- !量産まで1年以上かかる案件が普通で、その多くは発売されず、自分の名前が残る成果物は稀
- !国内メーカーのインハウス採用は新卒一括の枠が中心で、時期を逃すと次の機会まで間が空く
段階別 準備ロードマップ
中高生のうちに
- 家にある壊れた家電を一つ分解して部品を並べ、写真を撮り、なぜその位置にネジがあるのかを書き出す
- 毎日一つの物を三方向から10分以内でスケッチするノートを作る
- 無料のTinkercadやFusion 360教育版でペン立てを一つモデリングし、学校の3Dプリンタや出力サービスで形にする
大学・初期
- 授業課題を一つ選び、ユーザーインタビュー3人、問題定義、スケッチ、モック、成形肉厚の確認までを一つの流れで見せるポートフォリオページを作る
- RhinoやSolidWorksで作ったモデルをKeyShotでレンダリングし、同じモデルをケミカルウッドや3Dプリントで実物モックにする
- 特許庁のJ-PlatPatで好きな製品の意匠公報を探し、出願図面がどの図で構成されているかを写して描く
- グッドデザイン賞の学生向け部門や企業の学生コンペに毎年一つ出す。受賞より締切に間に合わせて完成させる経験が目的
就職準備
- ポートフォリオから完成レンダリングだけ並べたページを外し、案が変わった理由と設計者からの指摘を書いたプロセスページに置き換える
- メーカーのインハウス採用とデザイン事務所のジュニア募集の両方に応募し、面接では実物モックを持って説明する準備をする
- 最初の職場で成形メーカーや金型メーカーとの打合せに同行したいと先に言う。工程を目で見た経験が次の案の説得力になる
おすすめの専攻・分野
資格・試験・ポートフォリオ
伸ばすべき素養
資格の外で結果を分ける力、今から積めるもの
量産を見据えた設計
案は射出成形、プレス、ダイカストといった工程で実際に作れるものでなければ会議の机に載らない。アンダーカット、肉厚のばらつき、パーティングラインの位置をスケッチ段階で自分で見つける人と、設計者に戻されてから直す人では速度が大きく違う。今から鍛える方法は、家にあるプラスチック製品を5つ選び、パーティングラインとゲート跡、リブの位置を探して写真の上に印を付けてみることだ。
スケッチと3Dモデリング
頭の中の形を他人に見える状態にする速さが、この職種の基礎体力だ。会議中に紙に描いて方向を合わせ、その日の午後にRhinoやSolidWorksで面を張り、翌日レンダリングとモックで確かめるリズムが繰り返される。一つのツールだけ得意な人より、手描きからサーフェスモデリングへ形を崩さず移せる人が現場で長く使われる。今から鍛える方法は、毎週一つの物を選び、スケッチ3枚、3Dモデル1つ、レンダリング1枚で同じ形を三度作ってみることだ。
ユーザー観察
ボタンが見つからない人、取っ手を逆に持つ人を実際に見た経験がなければ、形の決定は好みの争いになる。インダストリアルデザイナーはインタビューより、人が物を実際に扱う場面を観察して根拠を集め、その根拠で営業や設計者の前で案を守る。今から鍛える方法は、電車やカフェで人が一つの物を使う様子を20分観察し、予想と違う使い方をした場面をスケッチと一行メモで10個集めてみることだ。
設計者・購買との交渉
デザイナーに最終決定権がない会社が大半なので、案を生かす力は描く技術ではなく、会議で根拠を示して代案を出す力から生まれる。肉厚を減らせという要求に感情で抵抗する代わりに、強度が要る部位にリブを足した代案図面を翌日持ってくる人が信頼を得る。今から鍛える方法は、自分の課題を一つ選び、設計者の立場と購買担当の立場からそれぞれ反対意見を3つ書き出し、その一つ一つに対する代案スケッチを先に作っておくことだ。
現実のアドバイス
難しさは描くことにではなく、描いた案を金型条件と原価の中で生き残らせることにある。日本では家電、自動車、精密機器メーカーのインハウスデザイン部門が最大の受け皿だが、新卒一括採用の枠が中心で時期を逃すとデザイン事務所やフリーランスから始めることになり、案件単位の収入の波を受け止める覚悟が要る。人を辞めさせるのは実力不足より、繰り返される無力感だ。1年以上抱えた案件が発売直前で止まり、営業や原価の会議を経て案が最初と別の物になる経験が重なると、続ける理由を見失う。長く続けている人は成形メーカーや購買担当の言葉を覚え、その会議の中で案を守る方法を身につけた人で、意匠登録に自分の名前が載らなくても手に取れる物が世に出た事実から次の力を得ている。